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【GCNext'24】障がい者支援とニューロインクルージョンの推進

著者:福永圭佑(金融NEXT企画部 開発企画課)


はじめに:技術を通じたアクセシビリティの向上


Google Cloud Next '24 で開催されたセッションで「How Gemini supports disability accessibility and neuroinclusion at work(Gemini による職場での障害者アクセシビリティとニューロインクルージョンのサポート)」を聴講しました。


ダイバーシティやインクルージョンは私も注目しているテーマですし、その内容がとても示唆に富んでいたのでシェアしたいと思います。

このセッションは、技術がいかにして職場のアクセシビリティと包摂を促進するかに焦点を当てていました。(講演者が聴導犬を伴って壇上に上がったり、会場で手話通訳が行われていたことも印象深かったです。)



Civic Entertainment の David Cohn 氏は聴導犬と壇上へ



用語の解説


セッションの中で、日本ではまだあまり耳慣れない言葉も出てきたので、前提知識として簡単に解説しておきます。


ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)


ニューロダイバーシティは、神経学的多様性とも訳され、自閉症スペクトラムや注意欠陥多動性障がい(ADHD)などの神経疾患は、脳の差異に過ぎず病気や障がいではないと提唱するものです。

脳の違いをお互いに認め、支援することをニューロインクルージョンと言います。


エイブルイズム(Ableism)


エイブルイズムは、「Able-ism」と切ると分かりやすいのですが、「できる(=

Able)」が優れているとする考え方です。

「できない(=Disable)」人は、矯正または排除されるべきという発想に繋がり、障がいを持つ人々に対する差別や偏見の背景にある考え方とされています。社会的、職場的な障壁を生み出す大きな要因になっています。



Gemini for Workspaceが提供する価値


セッションでは、世界中で約16%の人々が何らかの形の障がいを持ち、15-20%がニューロダイバージェントであるとのデータが示されました。

これらの人々は、職場や社会全般においてさまざまな障壁に直面しており、その解消は急務とされています。


Gemini for Workspace は、この課題に対処するため、書類作成、データ整理、画像生成などの作業をAIが支援し、障がいを持つ人々がスムーズに業務を行えることを支援します。


セッションの後半で、聴覚障がい者の David Cohn 氏を交えた談話がありました。

COVID-19 の前は、表情や口の動きで話していることをかなり把握できていたのに、みんながマスクをするようになって、誰が何を言っているのか全く分からなくなり、深い孤独を感じるようになってしまった、という体験を共有してくれました。

この話は真に迫っており、私自身もマスクをして過ごしていましたが、そのことでこれほど影響を受ける人もいるのかと衝撃を受けました。


そんなときに、彼の大きな助けになったのが Google Meet のキャプション(字幕)機能だったそうです。音声が文字に変換されるこの技術が彼らの孤独感を軽減し、コミュニケーションを円滑にしているという話は、多くの参加者に感銘を与えていました。

かつてのキャプション機能は、精度が悪く不謹慎ながら笑ってしまうような文章が当たってしまうことも多々ありましたが、品質が大幅に改善されており、実用性もかなり高まっています。



Next Step


彼らが次にすべきこととして掲げていたのは、このセッションの聴講者が、まずは組織にこの内容を持ち帰り、障がい者とニューロダイバージェントの包摂を強化するために、技術導入の推進や、アクセシビリティとインクルージョンのトレーニングにより組織に文化を醸成することでした。

企業文化に昇華させるためには、直接関係する一部の人だけではなく、すべての従業員や関係者も知る必要があります。

私も微力ながらの 1st ステップとして、このブログを執筆してみました。



まとめ


本セッションは、テクノロジーが障がい者のアクセシビリティやニューロインクルージョンをどのように支援しているかを Google Workspace を中心に例示し、参加者に大きなインスピレーションを与えました。


ダイバーシティやインクルージョンを弱者救済のような視点で語ってしまうこともありますが、私は技術が進化したり社会がより便利になるためには、障がい者やニューロダイバージェントな方々の視点や体験の共有が必要不可欠だと考えています。

例えば、両腕を失った人のためにデザインされた手を使わなくても履ける靴が、健常者にも人気になるなどの事例があります。


Google Cloud は技術力だけでなく、「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」にも非常に力を入れていることが、このセッションを始め、イベント全体からも伝わってきました。

私にとっても非常に共感できるアプローチなので、技術的な高度さや先進性もさることながら、シンプルであっても真に役立つもの、社会的価値のあるものにもしっかり光を当てて行きたいと決意を新たにしました!


Ableism の問題点について語る Google Cloud の Nicole Huynh 氏


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